Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme
ふと眼が醒めた時に、
「誰じゃ」
誰じゃと咎めてみた時に、その応答がなくて、何か急に自分の身の上へ押しかかるものがあるように思ったから、急いで褥を飛び起きて、
「どなたかお出合い下さい、悪者が……」
こう言って叫びを立てると、
「エエ、いめえましい」
と言って、枕を拾ってお君に打ちつけたのは、怪しい頬冠りの男でありました。
「あれ――」
お君はこの場合にも身を避けることを知って、その投げつけた枕を外すと、それが行燈に当ってパッと倒れて、燈火が消えて暗となりました。
「どなたぞ、おいで下さい、悪者が……」
この声で扇屋の上下はことごとく眼をさましました。その騒ぎと暗とに紛れて、悪者は疾うにどこへか出て行ってしまって、扇屋の若い者などは空しく力瘤を入れて、その出合わせることの遅かったのを口惜しがりました。幸いにしてお君の身にはなんの怪我もありませんでした。他の客人にも、家の人にも、雇人にも、女中にもなんの怪我もありませんでした。盗難は……盗まれたものは、それを調べてみるとお君は、面の色を変えないわけにはゆきません。
衣桁にかけておいた打掛と、それからさきほど兵馬の手を通じて、主君の駒井能登守が手ずから贈られた記念の二品が、確かになくなっているのであります。