Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠5

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme

Aozora Bunko

本所の鐘撞堂の相模屋という夜鷹の親分の許へ、米友は御無沙汰廻りに行こうという覚悟が定まったのであります。

手ぶらでも行けないから、何か手土産を持って行きたいと、米友も相当に義理を考えて、何にしようかとあっちこっちを見廻しながら歩いているうちに、柳原を通り越して両国に近い所までやって来てしまいました。

「両国!」

と気がついた米友は、全身から冷汗の湧くように思って身を竦ませました。両国は米友にとっては、よい記憶のある土地ではないのであります。よい記憶のある土地でない上に、そこへ来るとむらむらとして一種いうべからざるいやな感じに襲われてしまいました。

両国に近いところへ来て米友が、むらむらと不快な感に打たれて堪らなくなったのは、それは前にもここで心ならず印度人に仮装して、暫くのあいだ人を欺き、自らを欺いたことの記憶を呼び起してその良心に恥かしくなった、それのみではありません。

ここへ来るとお君のことが思い出され、甲州へ置いて来たお君の面影が、強い力で米友の心を押えてきたから、

「うーむ」

と言って米友は、突立ったなりで歯を食いしばりました。

「うーむ」

今はここへ来て、それがいつもするよりは一層烈しい心持になって、歯を食いしばって唸ると共に身震いをしました。