Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme
その時に家の外で、急に人の声が噪がしくなりました。
「危ねえ、土手が危ねえ」
という声。
「旦那様、笛吹川の土手も危ないそうでございます、山水も剣呑でございます、水車小屋は浮き出しそうでございます、あらくの材木はあらかたツン流されてしまいました、今にも山水がドーッと出たら大変なことになりそうでございます、誰も今夜は、寝るものは一人もございません」
小泉の主人にこう言って注進に来たのは、小前の百姓らしくあります。洪水の出る時としてはまだ早い、と竜之助は思ったけれども、この降りではどうなるか知らんとも思いました。
笛吹川はこれよりやや程遠いけれど、それへ落つる沢や小流れの水が、決して侮り難いものであることは、竜之助も推量しないわけではありません。
ことに山国の出水は、耳を蔽い難きほどの疾風迅雷の勢いで出て来ることをも聞いていないではありません。不幸にして山国とだけは心得ていても、この辺の地形についてまるきり観測の余地のない竜之助は、果して出水がどの辺に当って起り、どの辺に向って来るんだか、充分に呑込めていないのでありました。白刃の来ることと、天災の来ることとはあらかじめ測ることができません。