Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme
この出水も気になるし、お銀の帰りも気になるけれど、なんとも詮術はありません。竜之助は一人で蒲団を取り出して、荒々しくそれを展べて横になりました。外では半鐘の声がしきりなしに聞えるのに、内では、これもまだ早かろうのに一二匹の蚊が出て、ぶーんと耳許で唸りました。それを掌で発止とハタいて打ち落し、うつらうつらと枕に親しみかけました。
けれども、外はその通りに騒がしいのに、今や全村の犬も鶏も声を揚げてなきだしました。人畜ともに寝ることのできない晩に、竜之助とても安々と眠るわけにはゆきません。ただ横になったというだけで、外の騒ぎを聞き流していようというのであります。
この東山梨というところは、言わば全体が笛吹川の谷であることは竜之助もよく知っていました。三面から翻倒して来る水が、この谷に溢れ返る時の怖ろしさも、相当に峡東の地理の心得のある竜之助にとっては、理解ができないでもありません。
しかし、この時分になっては竜之助は、天災の来ることを怖れるよりは寧ろ、山が大きな口をあいて裂け、我も、人も、家も、獣も、ことごとくブン流されてみたら面白いだろうという空想に駆られて、かえって外の騒ぎを痛快に思うような心持でいました。