Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme
甚三郎が蝋燭を片手に眺めているのは、その外の方の海でありました。内の海は穏かであるが、外の海は荒い。ことに、外房にかかる洲崎あたりの浪は、単に荒いのみならず、また頗る皮肉であります。船を捲き込んで沈めようとしないで、弄ぼうとする癖があります。来ろうとするものを誘き込んで、それを活かさず殺さず、宙に迷わせて楽しむという癖もあります。試みに風凪ぎたる日、巌の上に佇んで遠く外洋の方をながむる人は、物凄き一条の潮が渦巻き流れて、伊豆の方へ向って走るのを見ることができましょう。その潮は伊豆まで行って消えるものだそうだが、果してどこまで行って消えるのやら、漁師はその一条の波を「潮の路」といって怖れます。
外の洋で非業の最期を遂げた幾多の亡霊が、この世の人に会いたさに、遥々の波路をたどってここまで来ると、右の「潮の路」が行手を遮って、ここより内へは一寸も入れないのだそうです。さりとてまた元の大洋へ帰すこともしないのだそうです。その意地悪い抑留を蒙った亡霊どもは、この洲崎のほとりに集まって、昼は消えつつ、夜は燃え出して、港へ帰る船でも見つけようものならば、恨めしい声を出してそれを呼び留めるから、海に慣れた船頭漁師も怖毛をふるって、一斉に艪を急がせて逃げて帰るということです。