Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme
辻斬の狼藉者は、たしかに老人の声に驚いて榛の木馬場を後ろへ逃げたようです。しかもその逃げぶりが蹌々踉々として頼りないこと、巣立ちの鳥のような歩きぶりであります。手を伸ばせば、羽掻じめになりそうな逃げぶりでありましたから老人は、
「奴め、怪我をしているな」
といちずにそう思ってしまいました。だから勇気はいよいよ増して一息に追いかけた時に、辻斬の狼藉者は、ふいと角を曲って榛の木馬場の稲荷の社の中へ逃げ込んだものと認められます。
「逃げようとて逃がさんぞ」
稲荷の前に並んでいた榛の木の間から狙って槍をエイと一声、突き込んだけれども槍は流れました。手許へ繰り込んで、二度突き出した時に、榛の木の蔭にいた辻斬の狼藉者は、ふらふらと二足ばかり前へ出ました。
二度突き損じたと思った老人は、二三歩とびさがりました。そこへ全身を現わした覆面の辻斬の狼藉者は、刀を抜いて腰のところへあてがって、腰から上を屈めてこっちを見ています。
三度、突きかけようとした遠藤老人は、どうしたものか、突くことができません。ハッハッと息が切れ出しました。槍がワナワナと顫え出しました。突くことができないのみならず、引くこともできないらしくあります。