Japanische Klassiker mit Furigana
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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme
半之助は市中の人たちの、じっさいの暮しぶりはよく知らなかった。けれども、そこに起こる日々の、胸の痛むような、悲惨な出来ごとや、欺瞞と強欲と狡猾のために、いつも抑えつけられ、踏みにじられている、無知や愚鈍の哀しさは、飽きるほど見もし聞きもしている。
自分の身のまわりでも同じことだった。
武家のなかでも、かたちこそ違うが、権力や名声のための、醜い諍いが絶えないし、もっとも多数の、身分の低い者たちは、侍として最低の外聞を保つことにさえ、苦しんでいた。
――なんのために生きているのだろう。
身ぢかな人たちの、ただあくせくと、その日の暮しに追われているさまを見るたびに、半之助は殆んど呻きたくなるくらいに、こう思った。
――あんなふうに生きていて、なにが楽しいのだろう、これからさきどうしようというのだろう。
権勢や名誉や物欲のために、恥を忘れて狂奔し、やっきとなって卑劣な術策を弄する人たちにも、彼は同じことを問いかけたかった。
――それで満足ですか、その富や名や権力が、あなたを本当に幸福にしていますか、これは間違った、こんな筈ではなかった、と思うようなことはありませんか。