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Japanische Klassiker mit Furigana

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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme

Aozora Bunko

漠然とした恐怖感、謎めいた危険の暗示、しかも断ちがたい異様な執着。そういったものが、脈絡もなく繰り返してあるだけだった。

半之助はやがて、その調書を投げだした。

彼はおちつかなくなった。もう、村野と夕食を共にすることもなくなり、酒を飲もうとも云わなかった。

「なにを待ってるんだ、いつまでぐずぐずしているんだ」

そんなことを、とつぜん呟くことがあった。自分では意識しないで、そして、自分の呟きにびっくりしたように、慌ててまわりを見やったりした。

明らかに、彼のなかでなにかが動きだしていた。それは外がわからきたものでなく、彼の内部に、深く、ながいこと眠っていたものであり、その時期が来て、にわかに、めざめだしたもののようであった。

――かんば沢。

今や、その名が、彼のなかでふくれあがり、彼を掴み、恐ろしいほどの力で、彼を誘惑した。その名は、彼の十歳のときに、妖しい強烈な印象を植えつけた。十四歳で叔父の失踪を聞いて以来、いつかしぜんと忘れていたが、じっさいにはそのあいだも、隠れた意識の底にあって、絶えず彼に呼びかけ、彼を支配しようとしていた、ともいえるようだ。