Japanische Klassiker mit Furigana
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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme
顔も知らないし、いましがたの、闇の中へ的確に矢を射込んだぬしが、その男であるかどうかは、わからないが、もしその男であったとしても、半之助には、もう少しも不自然には思えなかった。
――あの女の企図したことは、すべて失敗した、柳沢吉保も、その権勢の座から、逐われた。
――あの女は、ここで、最後のひとあがきを、しようとしている、どんな人間が、いっしょに来ていても、ふしぎではない。
彼はまた、草の露を吸った。
「あだし、あだ浪、よせては、返る浪」
われ知らず、そんな唄が口に出た。あさづまぶねの、あさましや、またあすの日は、誰に契りを、交わして、色を、色を交わして、枕はずかし、いつわりがちなる、わが床の山、よしそれとても世の中。
ひところ、江戸で流行した、俗謡である。
柳沢吉保が、将軍を邸に迎え、宴席におのれの妻娘を侍らせた、というのを諷したものだそうで、その作者である町絵師、英一蝶は、咎めをうけて流罪になった。
「よせては、返す浪……」
またしても、徒労な事をめぐって、ひしめき、争う人の世のさまが、思いうかんだ。
――あの女の狂った眼つき。
もしかして、武田氏の天下が実現したとして、それでいったいどうだというのか。