Japanische Klassiker mit Furigana
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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme
もちろん漁師たちの家だろうが、どの家の前にも、一坪ばかり土盛りをした、囲いに、松葉牡丹や、鳳仙花や、名の知れない草花が、活き活きと咲いていた。
横丁へはいろうとしたとき、半之助は、うしろで妙な叫び声を聞いた。
「――ほっ、ほう……」
誰かを呼ぶらしい、清らかでつやのある、よく徹る、若い女の声であった。
「――ほっ、ほう……」
かっこうというふうにも、聞えた。
ふり返ってみたが、河岸のひなたで、子供たちが遊んでいるほかには、それらしい女の姿など、見あたらなかった。ただ、その岸に小さな舟入り堀があり、いま入ったらしく、帆をおろしている小舟が見えた。たぶんその舟の中で、漁師の娘か女房かが、叫んだのだろう、なかま同志の呼び声かもしれない。半之助はそう思って、主馬のあとを追った。
そこはどうやら裏口のようであった。
細い横丁を十間ばかりゆくと、黒い板塀の上に、のしかかるほど、びっしり繁った樹立があり、塀の一部に、小さな掛け行燈を出した、しゃれた木戸が切ってあった。
「ここだよ」
主馬はその木戸を、馴れた身ごなしで入った。半之助は、行燈に「丸茂」と書いてあるのを見た。