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Japanische Klassiker mit Furigana

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あるたんぼうきしゃのはなし

平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕

平林 初之輔

Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme

Aozora Bunko

*   *   *

今朝からこの物語をはじめることにしよう。もっと前から説明せんと読者にわからないかも知れんが、それは、その場合々々に補ってゆくことにする。今の場合、限られた時間内に、秩序だてて四年も前のことから書き出してゆく落ちつきは私にはないからだ。

今朝、八時過ぎのことである。私は妻が出てゆくと、大急ぎで浴衣を脱いで洋服に着かえた。すっかり外出の身じたくができると、今度は、厳重に家じゅうの戸じまりをした。家の中は真っ暗になった。しかし夜の暗さとはちがってどうも不自然な暗さだった。デュパンという探偵は昼でも部屋の中を真っ暗にしてランプのあかりで夜らしい雰囲気を人工的につくり出していたということだが、実際、真っ昼間に部屋の中を急に暗くすると、何だか自分が別人になったような妙な感じがするものだ。私は書斎へはいって、台ランプのスイッチをひねった。橙色の弱い光が、ぼんやりと周囲に放射された。私は、まるで誰か見ている人でもあるかのように――そんなことは金輪際ないことがわかっているにかかわらず――跫音をしのばせて書棚の方へ近づいて行って、右側の書棚の下から二段目の棚から、私は一冊のぶ厚い洋書をぬき出した。