Japanische Klassiker mit Furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme
妾たちは互いに魂をとりかえてしまって、あの人の魂が妾の身体の中へうつり、妾の魂はあの人がもって行ってしまったように思われることもありました。しかもこの過程は一本調子に変化なく行われたのではありません。ありとあらゆる変化と陰影と濃淡とをもって、昨日よりは今日、今日よりは明日と、どうにも動きのとれない最後の袋小路へむけて突進していったのです。
「もう永久に会わないことにしましょうね」妾はいつかあの人にこんなことを言ったことがあります。もちろん、一秒間だってあわずにいるのが苦しいもんだからこそ、そんなことを言ったのです。するとあの人はそれをよく知りぬいていながらも、いくらか不安になってくるので(恋人の神経は写真の乾板よりももっと敏感ですからね)
「僕もそう思っていたんです。貴女にあうのは苦痛をますだけだから」
真顔になってこういうのです。すると妾の心へは不安が倍加して伝わってくるので、またいや味な言葉を言いかえす。こんなことを繰り返して、互いの心を傷つけあったあとでは、しかし、きまって、力一ぱい、三分間も、つづけて抱擁しあうのが常でした。
妾たちは、別に何も約束はしなかったのですけれど、約束したのと同じでした。