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Japanische Klassiker mit Furigana

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あるたんぼうきしゃのはなし

平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕

平林 初之輔

Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme

Aozora Bunko

誓って言いますが、前の晩とはちがって、その日は、必ずしも、ホセにではなかったのです。誰にともなしにだったのです。

ちょうどその時、妾は観覧席に何か妾の眼を射るようなものがあるのに気がつきました。まるで大きな磁石がどこかにあって、妾の心が鉄になってそれにひきつけられるような感じがしました。で思わずその方向へ視線を送ると、正面の二階席の一番前列に、あの人が何とも言いようのない顔をして、両眼を釘付にされたようにして舞台の妾をにらんでいるのです。あの人のこの時の表情は今でもはっきりと私の頭に残っていますが、実になんとも説明のつかぬ、ありったけの愛児を失った上に自分も死んでゆく人のような深刻な苦痛の表情でした。

妾は気が転倒してしまって、倒れたホセの身体を跳びこえようとするとたんに、妾もその上へ重なって倒れてしまったのです。そしてもう起き上がることはできませんでした。芝居はもちろん滅茶々々でした。

だが騒ぎはそれだけではすまなかったのです。それとほとんど前後して、二階の観覧席でも大騒ぎがはじまったのです。正面の一人の客がとつぜん苦悶をはじめて、手当てをする間もなく、三十分足らずで絶命してしまったのです。