Japanische Klassiker mit Furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme
それをもって一目散に守衛のもとへかけつけたら……私はつい卑劣極まる考えを起こしたが、すぐにあわててその考えを打ち消した。たといこの男がどんな悪人であろうと、この男は私には親切だった。それに私を信用して何もかも打ち明けて、いま私の前で眠っているのだ。それにこんな親切な人間が悪事をするわけはない。何かの間違いに相違ないと私は考え直した。
「やっぱり愚図々々していちゃ危険だ」と眠っていたとばかり思っていた青年がその時出しぬけに起き上がって言った。「あの野郎のことだから、この薄暗がりの中できっと鞄の中味を調べてみるに相違ない。明日の朝まで待っていちゃ危ないから僕はこれで失敬しますよ」
「どうするんです?」私は吃驚してたずねた。
「外へ出るんです、夜の明けんうちに」
「どこから? 塀を越して?」
「塀を越すわけにはゆきませんが、逃げ道は外にありますよ。いくら安全だと思っても逃げ道のない袋の中へうっかりはいってゆけませんからね。どんな間違いが起こるかも知れませんから」
私はこの男の用意周到さに驚いたが、どこから逃げるつもりなのかは見当もつかなんだ。そして、いまこの男に逃げられるのは薄気味が悪くてたまらないような気がした。