Japanische Klassiker mit Furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme
「どうしたんだ」と言いながら、真っ先にねまきの上へどてらを着込んで台所口からとび出してきたのは、主人の下田だった。それとほとんど同時位に、二階に間借りをしている法学士の安田という男も、二階の雨戸をあけて、下の様子を見て「どうしたんです?」と慄え声で叫びながら、あわててとび降りてきた。
だが、下田の細君は、ひどくびっくりして、二十秒間ほど口がきけなかっただけのことで、別に気を失っているのでも腰をぬかしているのでもなかった。
「し柴田さんが……」起ち上がりながら彼女は、柴田の家の門前にへたばっている黒い物体を指さして言った。
下田は指さされた方を見ながら思わず二三歩前へ進んでいった。ちょうどその時に安田も下りてきて、あわただしく、そちらへ進んでいったのだった。
それは、氷りついた人間の死体であった。口から垂れている水液は、そのまま氷って、氷柱になって地べたにつながっていた。外套の袖や裾はもとより、頭髪も地べたに接している部分はかたく氷りついていた。帽子は一間ばかりはなれたところに踏みにじられたままやはり地べたに氷りついており、帽子の上にも外套の上にも一面に霜がおりていた。