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Japanische Klassiker mit Furigana

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あるたんぼうきしゃのはなし

平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕

平林 初之輔

Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme

Aozora Bunko

貴方はせっかく会って下さって何も仰言らなかったのね、妾も何も言わなかったけれど。だって何も言うことがないのですもの。下手な翻訳に原文の意味がまるっきり現せないと同じように、妾の心の中は、口へ出して言うと似もつかない平凡なものになって、貴方にさげすまれるのが関の山だってことがあまりにもよくわかっていたのですもの。貴方がだまっていらっしゃったのもそのためだと思うわ。でも妾には、あなたがどんなことを仰言っても、貴方のちょっとした言葉から太平洋ほどの意味を汲みとることができるわ。

それは妾が完全に貴方を理解しつくしているからのことです。そして、貴方を深く強く愛すればこそ理解できるのですわ。理解の上に愛が生ずるのではなくて、愛の上にこそ理解が生まれるのですわね。妾は、貴方に対して、世界の誰とだって愛を競うわ。

昨夜、公園のベンチの上で、妾たちの唇と唇とが触れあったとき、妾はすぐその場で断頭台へつれて行かれて、二十秒以内に素首にぎらぎら光る斧をあてがわれてもいいと思ったわ。

妾はもう完全に貴方に支配しつくされているんです。妾のこの手紙の文字さえ貴方の筆跡にそっくりになってきたでしょう。