Japanische Klassiker mit Furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme
あの人はまだ、ベッド・サイド・ランプをつけたまま眠っていた。枕元に青い表紙の洋書が開いたままになっていた。背を見ると、金字で The Recent Development of Physical Sciences と書いてあった。昨夜あんなことがあったのに、そして妾をこんなに苦しませておいて、平気で、本もあろうに、物理学の本を読んでいるなんて、この人の心臓の血は温かいのだろうかと妾は疑った。そしてぐうぐう鼾をかいて眠っている顔が、実に憎々しくなった。
「眠っちゃいないんだよ」その時あの人はぱっちり眼を開いてだしぬけにこう言った。「一秒間も眠れなかった。僕を殺しにきたのかね?」あの人は片っぽの眼を少し細くしてつけ足した。妾は非常な権幕で、二階へ上がってきたのだが、あんまり思いがけない言葉をきいたので拍子抜けがして、予定のプログラムが滅茶々々になった。唇をわなわなふるわしながら妾は一言も口へ出さなかった。
「そうそう、それだ、僕の待っていたのは!」とあの人はがらりと言葉の調子をかえて言った。「今くらい僕はお前の顔の美しかったのを見たことがない。今くらいお前の心の緊張したのを見たことがない。