Japanische Klassiker mit Furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme
「それにしても、僕の身元がよくわかったねえ」
「それは君のつとめている工場でしらべて貰ったんです。あの工場では君の立候補を喜んでいないから、こちらの便宜を十分はかってくれましたよ」
「では、あの病気で死んだのは誰だい? 君は罪もない人間を殺したんではないか?」
この質問を彼はひどく恐れていたと見えてあわてて答えた。
「飛んでもない、ちがいます。あれは浅草で行き倒れの行路病者をひろってきたんです。僕はずいぶん世話をやいて、医者にもかけてやりましたよ。もちろん、もう二三日の寿命しかないとは思っていたんですがね。ああいう人間が必要なら浅草辺を一日かかればいつでも探し出せますよ。本人も道ばたで野たれ死にするよりゃ畳の上で死んだ方が楽ですから功徳ですよ」
こう答えたとき、彼の額には汗がにじんでいた。私は彼の言葉をほんとうだと思った。いずれにしてもその点を追窮するつもりはなかったので質問をつづけて行った。
「で君はあの貸家にそんな大病人をひとりでおいといたのだね?」
「どうもあのひどい肺病やみと一つ部屋の中に寝ることもできませんし、それに夜、家を空けちゃこちらで、あやしまれますからね。