Japanische Klassiker mit Furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme
「ああ、よかった」
わけは分らずに礼讃した。といってそれはお世辞ではない。やはり満足感であった。
にわかに彼らは立ち始めた。あとはめいめいの農家の宿所に帰って、寝ることしか考えていなかった。
「勘太、おまえは、何を泣いていた。尺八をきくと、泣く癖でもあるのか」
帰りかけるかれをつかまえて、介三郎がいったのである。どうやらそれは本当らしい。勘太はあわてて顔をそむけた。
「嘘ですよ、旦那。泣いてなんぞいやしません。……そんな変な癖なんか」
草履が見つからずに、皆よりひと足おくれて出て行った。
雨が久しく降らないので、土が乾きぬいていた。勘太は、この春塚の上から移植したばかりの梅と松が、その帰りがけにも気にかかったとみえて、庫裡から水桶をさげて来て、その根に一杯ずつの水を与え、これで寝られるというふうに独りであとから山門を出た。
部落のほうへ向って、低い石段がある。そこをかれが降りかけたときだった。蝙蝠のような人影が、ひらっとかれの側へとびついたと思うと、何か針のような光ものが掠めた。
「あっ。畜生っ」
よろよろと下の段までよろけて行って、勘太は、べたりと、坐ってしまった。