Japanische Klassiker mit Furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme
「それは公儀へも、ちゃんとお届けした上の公然なる旅だけを仰っしゃったのでしょう。どうして」
と、紋太夫は失笑をもらして、
「なかなかそんなものではありません。三十四歳で当主につかれるまでのあいだは、何分、ご自由でしたから、お部屋附の若ざむらい五、六名を、お頭巾組と称して、みな、つねに黒い頭巾をよく被られて、時にはその影武者をお部屋の主に見せておき、ご自分は一、二名のものを連れたきりで、ぷいと出たまま、ふた月も三月もお館へ帰られないことなど、屡であったように覚えておりまする」
「どこへ行ったのか」
「天海を翔けあるいて来たなどとよく冗談をいっておられましたが――恐らくあのお方は、日本じゅうご存知ないところはございますまい」
「ふム……。その頃、そちは?」
「まだ、お小姓の端、ちょこなんと、加えられたばかりの幼年でございました」
四
「その影武者めいた幾人もの家臣は、いまでも、西山荘の隠居の身近におるのであろうか」
「いや、お若い頃のことです。その後はもう……」
「とにかく、正面を見ただけでは、解り難い人だ。柔和かと思えば剛毅、無策かと思えば遠謀家。あの隠居だけは、端倪できぬ」