Japanische Klassiker mit Furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme
に虚構を信じさせるべく努めた。
「はや、夜も更けよう。帰ったがよい」
吉保にいわれて、検校は、檻から放たれたような気がした。
倉皇、立ちかけたが、
「こよいのことは、何とぞ……」と、思い出したように、何度も詫び入った。
「まさか故意に、あのような供を召連れて来たわけでもなかろう。ただあの男の――水戸の江橋林助とか申したの――身がらは此方に申しうけるからそのつもりで」
検校が帰ってゆくと、
「てまえも、はや」
と、紋太夫もいとまを告げ、また幾日かをおいて来ることを約した。
彼の帰るのを機に、お蕗も家臣にまもられて、奥の棟へ立って行った。ついに一言もものをいわずに。
――が、長い廊下を遅々と歩いてゆくあいだ、かの女は庭のほうを、面伏せな眼のすみから、どれほど懸命に見たか知れなかった。
老公の家臣が、水戸のひとが捕われている。ということを知っただけでも、彼女の胸はさっきから狂瀾に似て鳴りさわいでいた。
けれども、庭面は暗かった。
大きな木の影は星をかすめていたが、木の根がたの人影は分らない。ただあのあたりにと、眸をいためただけで通りすぎた。
しかし、そこに縛りつけられている江橋林助のほうからは、たしかに見えた。