Japanische Klassiker mit Furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme
――林助か? 胸おどらせて。
白い顔が見えた。男ではない。江橋林助ではなかった。
白い顔は風の音を聞いている。又四郎の眼はらんらんと自然身は伸びあがっていた。
そして両手で口をかこい、できる限り、声をひそめて、窓の白い顔へいった。
「お蕗どのか……」
ふいに、小窓の戸は閉まった。それほどな小声もかの女をいたく驚かせたらしい。又四郎もふたたび身をその下にかがませていた。
しばらくすると、また、小窓の戸は、一寸ぐらい開いた。注意ぶかく、次には、五寸ほどあけた。そして、みな開けた。
「どなた?」
唖のひとは、初めて小声を発した。又四郎は伸びあがって、
「わしだ。……人見」
「お、お」
「蕗どの。出られないのか。どこか、破っても」
「出してください」
低い――歯の根でいうような小声ながら――その微かな中に、俄然、眼をさました魂のさけびが、必死にもがきたてていた。
「よし」
非常に簡単なことのように、又四郎は脇差を抜いて、橋廊下を跳びあがった。この厚い板戸を切抜こうとするらしい。
かの女は、内から告げた。そんな所にいてはたちまち人目につく、床下へ床下へ――と教えるのだった。