Japanische Klassiker mit Furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme
そこを、そっと覗いて、
「介三郎どの」
鹿野文八が声をかける。
介三郎はあわてて、打粉ぶくろを小筥にしまい、刀を拭いて、鞘におさめた。
そして初めて、膝をうしろに向け、
「文八どのか。何だ」
「……あなたに、お会いしたいと申して、ご門の外に、待っておるお人がいる。ちょっと、お顔をかしてあげて下さい」
まるで頼むような取次ぎである。
「わしに会いたい者が? ……。はて、お玄関へ訪れぬのか」
「そこは、ちと……参りにくい事情があるのでしょう」
「だれだ、いったい」
「…………」
文八は、入って来て、かれの側に膝を折った。そして、何か耳へささやくと、介三郎の眼うちにも、明らかに愕きの色がみちた。
「……そうか!」
すぐ起って、介三郎は文八より先にそこから出て行った。裏口から草履を穿く。そして庭ごしに、老公の眠っている部屋の明るい障子を遠く窺いながら、また、すたすたと表のほうへ迫って行った。
大股に、門を出て、十歩ほどで立ちどまった。
右を見、左を見る。
すると、彼方の麦畑のそばにある梅の木の下に、ぽつねんと佇っているひとりがあった。鼠色の着物を裾みじかに着て、わらじ穿き、そして天蓋を被っている。