Japanische Klassiker mit Furigana
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おうしゅうきこう
欧洲紀行
横光 利一
Lesen Sie 欧洲紀行 (おうしゅうきこう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.107 Zeichen · 241 Bildschirme
あッと云う間にもうやられてしまっている。こういう時には、税金と思って私は金を払う。
イタリアからスイスへ入る国境のあたりはここがスイスじゃないかと間違うほど、山水の美が増して来る。しかし、一度シンプロンを越えてスイスへ這入ると、山岳の峻嶮、空気の清澄、氷河の豪宕、隔段の相違がある。さらに下り、モントルウの附近に来ると、その景観の玲瓏秀抜、自ら襟を正さしめるものがある。ここを通過し、レマンの古城を下に見下しつつ、湖水の沿岸をロザンヌに近づくに従って、頭は全く空虚になり、物事など考えず、ようやく旅の本格に這入って来る。山野の美、たけなわだ。あまりに優れた所というものは、何となく俗っぽい。これなくして美は本物ではないのだ。
午後八時半、ロザンヌ着。さまざまな国を見て来たものだと思う。感想など湧き上る暇もない。思うにこれは、頭がいっぱい何かで詰ってしまったからだ。物というものは、中が空虚でなければ廻るものじゃないと老子は云ったが、私の空虚さは詰って空虚になったのだ。
ロザンヌは小さなパリーに湖を置いたようなもの。胸突くような坂を登る毎に、横に平坦な大通りが増して来る。