Japanische Klassiker mit Furigana
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おうしゅうきこう
欧洲紀行
横光 利一
Lesen Sie 欧洲紀行 (おうしゅうきこう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.107 Zeichen · 241 Bildschirme
国境はどの辺りか全く分らない。森と畑の上をただ飛ぶだけだ。ヨーロッパの大戦で最も激しく殺戮し合った土地が今眼下にあるのだ。人間があらん限りの智慧を絞ると、あのような愚かなことをするということ――こう考えた以外に私には何の感懐も起って来ない。ただ私は、もう一度この上を飛ぶことが恐らくあるまいと思うにも拘らず、平然としている自分が怪しまれて来るだけだ。
どこを飛ぼうと飛んでしまった以上は、一刻も早く目的地へ着きたいと思う心ばかりである。つまり、私は機に乗っている限りは鳥の心理になっているのだ。空中では人間は眠っていればそれで良いと見える。森、畑、同じものばかりだが、その他に見る物がないからときどき下界を眺めてみる。
「ああ、また覗いた。何と単調なものだろう。」
河がある。しかし、どこの河だってかまやしない。――このように心はふてぶてしい限りになって、退屈な空中と闘いながら、どうかして眠ろうとするばかりだ。
午後二時(時間表では十四時と書いてある)ケルンへ着く。平野の中央に尖塔を鋭く立てた煉瓦色の市街である。石炭の匂いが全市を包んでいる。地上の近代活動は空中の疲労をもって舞い降りて来る旅人には、どうしてこんなに憐れに見えるのであろう。