Japanische Klassiker mit Furigana
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おうしゅうきこう
欧洲紀行
横光 利一
Lesen Sie 欧洲紀行 (おうしゅうきこう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.107 Zeichen · 241 Bildschirme
森の中はマロニエの花盛りだ。コーヒーを飲んでいる茶碗の中へ花が舞い落ちて来る。花蔭からもる日光にあたっていると、物云うのもいやになり、自分が何ぜこんな所へ来ているのか、おかしなこともあったもんだと不意に疑問を持つのである。私は自分で来たくて巴里へ来たのでは決してない。私の友人たちが、行け行け、行け行けと、とうとう押し出してしまったのだ。さて来て見るとこの通りで、どっちを向いても白い花と青葉ばかりだ。ここにいて日本を思うと、日本人は誰も彼も枯野の中で酒を飲んでいるように見えて来る。ここでは樹の梢にラジオがあるので、音楽は花の中から降って来る。
さて夕暮になって立ち上った。若い男女の二人が、喧嘩をしていると見えて、黙って立っているその上に、白い蝋燭を立て連ねたようなマロニエの花叢が、風に重々しく揺れ動く。岡本君は巴里の屋根の下を「若者よ、愛せ。」とフランス語で唄いながら、その前を行き過ぎる。すると、若い男女の二人は前からの争いのまま、どちらからともなく不機嫌そうに接吻した。鶯が衰えた声で濃密な葉の中で鳴いているのを聞きつつ、私はこれをこの日の終りとした。