Japanische Klassiker mit Furigana
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こはんていじけん
湖畔亭事件
江戸川 乱歩
Lesen Sie 湖畔亭事件 (こはんていじけん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.335 Zeichen · 137 Bildschirme
で、其注射器によって、長吉の腕からと、私の腕からと、両方合せて茶碗に一杯程の血潮を取り、それを海綿で以て板の間へぬりつけた訳なのです。恋人の血を取って自分の血に混ぜ合せる、その劇的な考えが僕を有頂天にしてしまったのです」
「でもたった茶碗に一杯の血が、どうしてあんなに沢山に見えたのでしょう。人一人が死ぬほどの量に見えたのでしょう」私は思わず口をはさみました。
「そこですよ」河野はいくらか得意らしく答えました。「それはただ、拭き取るのと、塗りひろげるのとの相違です。誰にしても、まさか、血潮を塗りひろげた者があろうとは考えませんからね、拭きとったとすれば、あれだけの痕跡は、確に人一人殺すに足る分量ですよ、ところが本当は、さも拭き取た跡らしく見せかけて、その実出来るだけ広く塗り廻したのです。商売の絵心で以て、柱や壁のとばっちりまで、極念入りに拵え上げ、余ったのを短刀の先に塗りつけて、例のブリキ箱に入れて置いたのです。無論長吉はその場から逃がしてやりました。彼女にしては、泥坊の汚名を着るか、自由の身になるかの瀬戸際ですから、怖がっている場合ではありません。山伝いに闇にまぎれて、Y町とは反対の方へ走りました。