Japanische Klassiker mit Furigana
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こはんていじけん
湖畔亭事件
江戸川 乱歩
Lesen Sie 湖畔亭事件 (こはんていじけん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.335 Zeichen · 137 Bildschirme
。幸、そこの空地には脊の高い杉の木立があって、その辺の壁を一面に覆い隠していましたので、夜が明けても私の装置が発覚する憂いはありません。のみならず、そこは、家の裏側に当たる場所ですから、滅多に人の来る様なことはないのです。
盗賊の様に、木の枝を伝ったり、浴場の窓から忍び込んだり、私は暗闇の中で、夢中になって働きました。そして、三時間余りを費して、やっと思う様な装置を施すことが出来たのです。眼鏡の一端は、丸窓から、床の間の柱の蔭を伝わらせて、そこへ寝転びさえすれば、いつでも覗ける様にして、その柱の所へは、私の合トンビをかけ、女中などに仕かけを見つけられぬ工風をしたものです。
さて、その翌日から私は、不思議な鏡の世界に、耽溺し初めました。壁の隅にとりつけた、鼠色の暗箱の中には、方二寸ほどの小さな鏡が、斜めに装置せられ、上のレンズから来る脱衣場の景色を、まざまざと映し出しています。光線がたびたび屈折しているので、それは甚だ薄暗い映像ではありましたが、そのために却て、一種夢幻的な感じを添え、もうこの上もなく、私の病的な嗜好を喜ばせるのでした。
私の部屋は二階ですから、湯殿へ行く人の跫音は、無論聞えず、又、丸窓から覗いたとて、そこには湯殿の屋根が見えるばかりで、内部の様子を伺うことは出来ません。