Japanische Klassiker mit Furigana
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こはんていじけん
湖畔亭事件
江戸川 乱歩
Lesen Sie 湖畔亭事件 (こはんていじけん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.335 Zeichen · 137 Bildschirme
どうしても今夜の中に取外さなければ、安心することは出来ないのです。
その夜は事件のために、家の中が何となく騒がしく、常の日よりも余程おそくまで、話し声が絶えませんでしたが、でも、十二時を過ぎた時分には、やっと人々も寝鎮まった様子でありました。私はそれでも、用心に如くはないと思い、殆ど一時近くまで、じっと待っていました。その間にも、私はたびたび覗き眼鏡の鏡を見て、脱衣場の人影を気にしていたのですが、さて、いよいよこれから窓の外へ忍び出て、秘密の仕事に取りかかるという時に、何気なく、もう一度そこを覗きますと、一刹那ではありましたけれど、ふと恐ろしいものが鏡の底に蠢いているのを発見しました。
それは昨夜見たのと寸分違わない、男の手先の大映しになったものでした。手の甲にはやっぱり同じ様な傷痕らしいものが見え、太くたくましき指の恰好から、全体の調子が、昨夜の印象と少しも違わないのです。
それがチラリと見えたかと見ると、ハッと思う間に消え去ってしまいました。決して夢でも幻でもありません。私は事の意外さ、且は恐しさに、最早何の影もない鏡の表を見つめたまま、暫くはその場を動くことも出来ませんでした。