Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こはんていじけん

湖畔亭事件

江戸川 乱歩

Lesen Sie 湖畔亭事件 (こはんていじけん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.335 Zeichen · 137 Bildschirme

Aozora Bunko

脱衣場の板の間の血痕は、綺麗に削りとられていましたが、その削り跡の白々と木肌の現れた様は、かえって妙に気味悪く、先夜の血なまぐさい出来事を、まざまざと思い起させるのでした。

客といっても、多くは殺人騒ぎにきもをつぶして、宿を立ってしまい、あとに残っているのは、河野と私の外に三人連の男客だけです。例の覗き眼鏡の花であった都の娘さんの一家などは、事件の翌日、匆々出立してしまいました。そんなに客が少い上、多人数の傭人達はまだ入浴していないのですから、浴槽は綺麗に澄んで、その中に体を投げ出していますと、足の爪までも、一つ一つ見分けられるのです。

男女の区別こそありませんが、都会の銭湯にしてもよいほど、広々とした浴槽、ガランとした洗い場、高い天井、その中央に白々と下った電燈、全体の様子が、夏ながら異様にうそ寒げで、ふとそこのたたきに、人体切断の光景など見える様な気もするのでした。

私はさびしきまま、先日来顔馴染の三造が、壁一重向うの焚き場にいることを思い出して、例の小さな覗き穴のふたをあけて彼の姿をさがしました。

「三造さん」

声をかけると、

「ヘイ」

と答えて、大きな焚き口の一角から、彼のボンヤリした顔が現れました。