Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
咲耶子の報告がおわると、物見の松のしたでは、伊那丸と軍師を中心にして、悲壮な軍議がひらかれた。まえには、人穴城の強敵あり、うしろには徳川家の大軍あり、雨ヶ岳は、いまやまったく孤立無援の死地におちた。
おそらくは、主従の軍議もこれが最後のものであろう。軍議というも、守るも死、攻むるも死、ただ、その死に方の評定である。
時は、たそがれ刻か、あるいは、宵か夜中か明け方か、いずれにせよ、闇でも花とちる身にはかわりがない。
こい! 徳川勢――。
伊那丸方の面々は、馬には飼糧、身には腹巻をひきしめて、雨ヶ岳の陣々に鳴りをしずめた。
そのころ、人穴城の望楼のうえにも、三つの人影があらわれた。大将呂宋兵衛に、軍師丹羽昌仙、もうひとりは客分の可児才蔵。三人は、いつまでも暮れゆく陣地をながめわたして、なにやら密議に余念がない。心なしか、こよいはことに砦のうえに、いちまつの殺気がみち満ちていた。
富士はくれゆく、裾野はくれる。
きょうで四日目の陽は、まさに沈もうとしているのに小太郎山へむかって、駿馬項羽をとばせた木隠龍太郎はそも、どこになにしているのだろう。
かれは、よもや雨ヶ岳にのこした伊那丸の身や、同志の人々を忘れはてるようなものではけっしてあるまい。