Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme

Aozora Bunko

「それ、咲耶子どのの笛がよぶ――」

よみがえったように、加賀見忍剣、巽小文治、木隠龍太郎の三名、音をしたって走り出すと、その余の手勢も波にすわるる木の葉のごとく、声なく音なく、渦の中心に駈けあつまる――

城やとりでの間道とちがって、豪農の家にある空井戸の横穴は、戦時財宝のかくし場とするか、あるいは、家族の逃避所とする用意に過ぎないので、もとより、二里も三里もとおい先へぬけているはずがない。

呂宋兵衛たち五人のものがわずか二、三丁の暗闇をはいぬけて、ガサガサと星影の下に姿をあらわしたのは、黒百合谷の中腹で、上はれいの多宝塔のある施無畏寺の境内、下は神代川とよぶ渓流がドーッとつよい水音をとどろかしている。

「道は水にしたがえ」とは山あるきの極意。

五人は無言のうちに、道どりの心一致して、蔓草、深山笹をわけながら、だらだら谷の断崖を降りてゆく。

――と、その時だ。

にょッきと、星の空にそびえた一本の白樺、その高き枝にみどりの黒髪風に吹かして、腰かけていたひとりの美少女、心なくしてふと見れば、黒百合谷の百合の精か星月夜のこぼれ星かとうたがうだろう――ほどに気だかい美少女が、手にしていた横笛を、山千鳥の啼くかとばかり強く吹いた。