Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
そこへ。
けさふとすがたを見せたのは、峡をつたって、小太郎山から眠らずにきた咲耶子である。
向こうがわには、緋おどし谷の部落をながめ、だれか渓流にくるのを待っていると、やがて二、三人の少女が染桶と糸のたばをかかえて、あかるい笑いをかわしながら、川床へ下りてきたようす。
咲耶子は、ゆうべのことで、苦悶の色のかくせぬ中にも、それを見ると、ニッコとして、帯のあいだの横笛を抜き、しずかに、歌口をしめしだした。
鳴る!
ゆるい、笛の音、高い笛の音。
「おや?」
河原のしろい顔が、みんな一しょにこっちを見た。
笛が――咲耶子のしろい手に高くあげられて、横に縦にうごいている。
合図であろう!
それを見ると、少女のひとりがなにかさけんだ。それにおうじて、あなたこなたの家から、ワラワラワラ馳けだしてくる。みんな同じ下げがみの少女、みんな同じ年ごろの少女、みんな凜々しい紅頬の少女。
みるまにちょうど三、四十人、蔦のかけ橋を踏みわたって、あたかも落花の散るように、咲耶子のいる向こうの峡へ馳けてくる!
笛は、早く早くと呼んでいた。
緋おどし谷の胡蝶たち、胡蝶の陣を組むのである。