Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
「おいおい、おいおい。そんな方角じゃあない。もっと右の方だ、右の方の道を降りろ。まだまだずッと沢の方――あの檜林がこんもり茂っている向こうの谷だ」
熊蔵はあとにのこって煙管をくわえ、その煙管で、しきりと上から方角をおしえている。
卜斎も崖ッぷちに腰をかけて、大きな革の莨入れを引っぱりだした。煙管もがんこなかっこうである。もっともそのころは、まだ煙草というものが南蛮から日本へ渡ったばかりで、そういう道具もすこぶる原始的なものだった。
すると、側にいた、蛾次郎のやつ。
「くッ、くくくく……うふッ……うふふふふ……」
と横を向いて笑いだした。
なにをおかしがるのかと伊部熊蔵がふりむくと、蛾次郎は口をおさえて、横にすましている卜斎をそッと指さした。
卜斎はなんにも知らず、がんこな煙管を斜にもって、スパリ、スパリ、とふかしている。
見ると、かれの鼻の穴から、ゆるい煙がでるのである。だれにしたって、煙草を吸えば鼻の穴から煙が出る。なんのふしぎもありはしない。
だけれど、いったん鼻かけ卜斎先生が煙草の煙をすって吐く段になると、一方の鼻の穴からは尋常に紫煙がはしり、一方の穴からでる煙はそッぽへ向かって噴出する。