Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme

Aozora Bunko

ちょうど、甲府の城下へはいってから、二日か三日目の午である。宮内は、馬場はずれの飯屋の縄すだれを分けてはいった。

すると、そこのうすぐらい土間のすみに、生意気なかっこうをした少年がひとり、樽床几にこしかけ、頬杖をつきながら箸を持っていた。

「おい、おやじ」

と、その生意気が年上の亭主にいう。

「なんだいこの魚は? いくら山国の甲府だって、もうちッと、気の利いたものはないのかい」

「それはやまめといって、みなさまがおよろこびになるお魚でございますがね」

「みんな田舎者だからよ。おれなんか、京都であんまりぜいたくをしてきたせいか、こんな古い物は食えねえや、ベーッ、ベーッ、あー、まずい。なんかほかの食べる物をだせやい」

「じゃ、こんにゃくとお芋はどうでございましょう」

「芋なんて下等なものはきらいだよ」

「へえ、蓮根、焼豆腐、ほかには乾章魚の煮ましたものぐらいで」

「ちっとも、おれの食慾をそそらないぞ」

「さようですか」

「乾章魚をおだし、がまんして食べてやるから」

と、箸で皿をつッころがした。

おそろしくいばった生意気、まるで大名の息子のようなことをいっている。やはり都会の少年の中には悪い癖があるなと、菊村宮内、なんの気なしにひょいと見ると、都会の少年ではない裾野育ち――竹生島ではさんざんお粥をうまがって食べたかの蛾次郎だ。