Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
諜者が、いきなり、奇声をあげて長安の肩へとびついた。
折もおりなので、石見守――。
はッ……と胆を冷やして曲者の手をつかみ、まえへもんどり打たせて投げつけようとすると、伊東十兵衛もスワとはねあがって、つかみ取った槍の穂に風をすわせ、石見守が投げつけたら、そこを立たせずに一突きと足をひらいた。が、曲者は、長安の肩をはなれない。
鈎のような手の爪で、しっかり襟もとへつかまっているので、十兵衛は槍をつきだしようがなく、あッと見ると、長安自身も、つかんだ曲者の手の毛むくじゃらにあきれかえる。
「あぶないッ、突くな」
「なんのこと――三太郎猿でございましたか」
「人をおどろかすやつじゃ、放せ、いたずら者め」
「や、殿。三太郎の襟首に、なにやら書状が」
「なに、手紙が」
「は、りっぱな打紐のお状筥で」
「だれが猿めにこんなものを結いつけたのか? やア、こりゃいよいよもって不審千万、浜松城お使番常用の筥、しかも紅房の掛紐であるところを見ると、ご主君家康さまのお直書でなければならぬが」
「とにかく、ご開封を」
「ウム、猿めを抱いてこい」
乱入者のそうどうの方も気にかかるが、これまた意外な天くだりの状筥、とにかく一見しようと、長安はあたふたと居間へはいり、灯をかき立ててなかをひらく。