Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
「それならここにいそうなものだが」
「ふしぎだなあ」
「奥の部屋には」
「つぎの間はない!」
「ではどこかに隠れ場所でも? ……」
早口に、こんな言葉をかわしながら、室内の物をとりのけて、しきりとだれかをさがしているようす。
むろんそれは、手組の筏にのって濠をこえ、館のそうどうに乗じて、ここへ潜入してきた、木隠龍太郎と巽小文治のふたりである。
「おのれッ」
と、そこに思わぬ敵を見かけた伊部熊蔵は、いきなり小文治のうしろ姿を目がけて、思慮なき刃を飛ばしていった。
「うむッ」
といってその胸もとへ、石火にのびてきた朱柄の槍の石突きは、かれの大刀が相手の身にふれぬうちに、かれの肋骨の下を見舞った。
「ざんねんだが、咲耶子のすがたが見当らなければぜひもない。このうえは、どうせのついでに、大久保長安の寝所を見つけて、きゃつの首を土産に引きあげよう」
欄のまわりに影ばかり見せて、ただワアワアとさわいでいる若侍たちを睥睨しながら、源氏閣から桜雲台の本殿へもどってくると、そこへあまたの武士に追いつめられてきた乱髪の小童があった。
「やッ、竹童!」
咲耶子にあわぬ失望は、そのうれしさにおぎなわれて、朱柄の槍と鍔なしの戒刀は、なんのためらいもなくその渦巻のなかへおどった。