Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
「なんだ、ぞうさはねえや」
蛾次郎は、短銃をふところへしまいこんだ。なかで、なにかカチャリといったので、さぐってみると肌身はなさない秘蔵の水独楽だ。
「じゃまだな」
と、また短銃をだして、手拭にクルクルとくるんだ。そいつを、ボロ鞘の刀と一しょに腰へさして、大小を差したように気取りながら、
「オイ、亭主さん、おつりをくんな」
と、もらったばかりの銀銭を餅屋の台へほうりだした。
そのつり銭を巾着にいれて、そとへ飛びだそうとすると出合いがしらに、カアーンという鉦の音が不意に鳴ったので、
「あ。びッくりした」
と、よこを見た。
七、八軒さきの横町から、地蔵行者の菊村宮内が、れいの地蔵尊の笈摺を背負って、こっちへ向かってくるのが見える。
「こいつはいけねえや、竹生島のおやじに会うと、またなにか、小やかましいお説教を聞かされるにちがいない」
こうつぶやいて、かれが、横を向きながら、ぷいと向こうへそれようとすると、おなじ宿場の軒をながしていた坂東巡礼の三十七、八ぐらいな女――わが子をたずねて坂東めぐりをして歩くお時という女房が、
「あッ。あの子! あの子!」
と、目をすえて、よってきた。