Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 144.562 Zeichen · 291 Bildschirme
「いらっしゃいまし、私は其月堂の家内で――」
と、お屋敷勤めの昔を匂わせようという小笠原流の挨拶が始まったのです。
こんなのに出られては、平次とガラッ八も引揚げるより外に術がなくなりました。
「いずれまた参ります。今日は急ぎますから」
ほうほうの体で立上がります。
「あれ、宗匠、頭巾のままで御挨拶は失礼じゃございませんか」
内儀が大きい声で注意すると、鶯谷宗匠はあわてて茶色の頭巾を脱ぎました。様子の年寄り染みる割合には、胡麻塩の毛が房々と生えて、鬢も髷も、思いの外見事です。
挨拶がすむと宗匠は、くるりと背を向けて、机の上の俳書に目を注ぎ姶めました。送っても出ようとはしない傍若無人さが、世捨人らしい気楽なところでしょう。
内儀に送られて縁側に出た平次は、何としたことか、よく磨き抜いた板敷に滑って、ステンコロリと転びました。
「あッ」
その上障子を一枚見事に押倒しましたが、其月堂鶯谷宗匠は振り向いても見ません。
「これはとんだ粗相をいたしました」
「どういたしまして、お怪我はありませんか」
「粗相は生れ付きで、こんな事は馴れておりますから」
平次の恐縮振りというものはありません。