Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 141.130 Zeichen · 288 Bildschirme
――あんなに弱っているんだから、へッ、へッ、へッ、へッ」
「鉄馬、頼む、浜路を助けてくれ」
「嫌だ」
「鉄馬」
「…………」
「鉄馬」
大坪石見が生垣を押破って飛付いた時は、宇佐川鉄馬は、喉笛を掻き切って、こと切れておりました。
その後の騒ぎは大変でした。後始末もさしおいて、あと一日とは生きないという、娘の浜路の行方を、必死になって捜したのです。
宇佐川鉄馬の出廻る先は、夜中ながら一軒残らず手を廻しました。隣近所は、恥も外聞もなく訊き歩かせました。が、どこにも居ません。土蔵も物置も、天井も床下も、わけても宇佐川鉄馬の居間は、嘗めるように捜しましたが、娘一人隠すほどの場所もなく、簪一つ、紐一本落ちてはいなかったのです。一と晩の努力も空しくて、夜は白々と明けました。
「平次、なんとか相成るまいか、浜路は当家のたった一と粒種だ。千万金を積んでも、この石見の命に替えても捜し出さなければならぬ」
大坪石見は、平次の前に手を突いて頼み込んだのです。
「あっしでも、この上の捜しようはありませんよ。宇佐川鉄馬さんの怨みだ。十何年も居候をしていた人じゃ、変な気にもなるでしょう」