Japanische Klassiker mit Furigana
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おうごんかめん
黄金仮面
江戸川 乱歩
Lesen Sie 黄金仮面 (おうごんかめん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.357 Zeichen · 287 Bildschirme
見るも無残な大努力。彼はさかさまに平蜘蛛の形で、すべっこい屋根の面に吸いついたまま、ジリリジリリと方向転換を始めた。手の平と、腹部と、足の指先の力で、ともすれば辷り落ちようとするのを、じっと支えながら、一寸ずつ、一寸ずつ、向きを換えて、遂に頭を頂上に向けてしまった。どんな軽業師も嘗つて企て得なかった離れ業だ。遥か地上の群集には、それが、不気味な金色の一匹の守宮の様に見えた。
さて、向きを換えてしまうと、今度は頂上への、もどかしい蠕動運動だ。動くか動かぬかの速度で、併し彼は確実に頂上へ進んで行った。一寸、二寸、三寸、そして遂に一尺、二尺。もう一息で頂上の金属の柱へ手が届く、アア、もう一息だ。地上の群集は、悪人の身の上ながら、息をつめ、手に汗を握った。
丁度その時、にじむ油汗の為に足の力が抜けた。ハッと思うと、ズルリ、全身が辷った。ワーッと上る群集の叫び声。均衡を失った身体は止めどもなく辷り落ちる。アア、もう駄目だ。群集の多くは、思わず目をとじた、顔をそむけた。
だが、何という底力だ。怪人は最後の一寸で踏みこたえた。彼の全身はその努力の為に地上からも分る程波打っている。