Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lisez 大岡越前 (おおおかえちぜん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 218 436 caractères · 437 écrans
しかも夜目にも白い覆面のうちの横顔は、この春の、恐怖の夜を、思い出させるに、充分だった。
――お袖は、自身番の灯も、辺りの気配も、否、あらゆる怖れをすでに忘れていた。
奉行! 南町奉行……その文字へ、かの女は、唾したいような憎悪をおぼえた。
なんたる権威の嘘。そらぞらしい掟の箇条書。コケ脅し。そんな偽善に、私だけは、騙されはしない――と、かの女の憤りは燃えやまない。
しかし、その根底にある悲恋の傷痕が生々と傷んで来ると、恨みは、純然たる女の復讐だけになった。女の一念と呪いを、眦にえがいて、咬み裂くような声を咽喉につまらせ、
「ちッ、ちくしょうっ」
と、刀を抜き、脳裡の人間像を斬るように、高札の脚へ斜めに斬り込んだ。
斬れない。腕の弱いせいか、一打ちには、斬れないのである。かの女は、一撃ごとに、夜叉の相になった。
――と。その手もとへ。
ひゅッと、何か、飛んで来た。
「あッ――」と、よろめいた時、かの女はそれが、一条の麻縄であることを知った。いうまでもなく、捕り縄だ。
搦んだのは、刀の鍔だった。かの女は、無意識に、刀を投げ捨て、泳ぐようなかたちで、逃げかけた。