Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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あめしょうしょう

雨瀟瀟・雪解 他七篇

永井 荷風

Lisez 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 414 caractères · 289 écrans

Aozora Bunko

我が家に近い桃林寺の裏手では酒買いに行く小坊主の大胆に驚き、大岡殿の塀外の暗さには夜鷹に挑む仲間の群に思わずも眼を外向けつつ、種彦は漸くその家の門にたどりついた。

直様家内のものをも遠ざけ、書ものをするからとて、二階の一間に閉じ籠ったが、見廻せば八畳の座敷狭しと置並べた本箱の中の書籍は勿論、床の飾物から屏風の絵に至るまで、凡て偐紫楼と自ら題したこの住居のありさまは、自分が生れた質素な下谷御徒町の組屋敷に比べてそも何といおうか。身に帯びるそれも極く軽い細身の大小より外には物の役に立つべき武器とては一ツもなく、日頃身に代えてもと秘蔵するのは古今の淫書、稗史、小説、過ぎし世の婦女子の玩具にあらずんば傾城遊女が手道具の類ばかり。ああ思えば唯うらうらと晴渡る春の日のような文化文政の泰平に沈湎して天下の事は更なり、わが髪の白くなるのも打忘れ世にいう悪所場をわが家の如く今日は吉原明日は芝居と身の上知らず遊び歩いていたその頃には、どういう訳か人の道を忘れた放蕩惰弱なものの厭しい身の末が入相の鐘に散る花かとばかり美しく思われて、われとても何時か一度は無常の風にさそわれるものならば、今もなお箕輪心中と世に歌われる藤枝外記、また歌比丘尼と相対死の浮名を流した某家の侍のように、せめて刹那の麗しい夢に身を果してしまった方がと、折節