Classiques japonais avec furigana
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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lisez 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 414 caractères · 289 écrans
疲れ果てた戯作者の魂は怪し気なる夢の世界へとさまよい出したのである。
最初に門人らの話声が近くなり遠くなりして、いかにも懶くまた心地よく耳許に残っていたが、いつか知ら風の消ゆるが如く潮の退く如くに聞えなくなってしまうと、戯作者の魂は忽ちいずこからとも知れず響いて来る幽な金棒の音を聞付けた。今時分不思議な事と怪しむ間もなく、かの金棒の響は正しく江戸町々の名主が町奉行所からの御達を家ごとに触れ歩くものと覚しく、彼方からも此方からも互に相呼応しつつさながら嵐の如くに湧起って来るのである。それと共に突然川水の流るる音が訳もなく高まり出した。種彦は屋根船の中に揺られながら眠っているような心持もすれば、また高い青楼の二階の深い積夜具の中にふうわりと埋まっているような心地もする。とにかく驚いて顔を上げると、自分の身体のある処よりも遥に低く、雨気を帯びた雲の間をば一輪の朧月が矢の如くに走っているのを見た。町の木戸が厳重に閉されていて番太郎の半鐘が叩く人もいないのに独で勝手に鳴響いている。種彦は唯ただ不審の思をなすばかり。通過ぎる人でもあらば聞質したいと消えかかる辻番所の燈火をたよりに、頻と四辺を見廻すけれど、犬の声ばかりして人影とては更にない。