Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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あめしょうしょう

雨瀟瀟・雪解 他七篇

永井 荷風

Lisez 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 414 caractères · 289 écrans

Aozora Bunko

偐紫楼の燈火は春よりも夏よりも徒にその光の澄み渡る夜もやや深け初めて来た頃であった。主人はいつぞや怪しき昼寐の夢から引込んだ風邪の床に今宵もまだ枕についたまま、相も変らずおのが戯作のあれこれをば彼方を一、二枚此方を二、三枚と読返していた折から、突然愛雀軒と題した彼の風雅な庭木戸を叩いたものがある。茶の間の長火鉢に妙振出しを煎じていた妻何心もなく取次に出て見ると、堀田原の町名主を案内にして仲間に提灯持たせた中年の侍、小普請組組頭よりの使者と名乗って一封の書状を渡して立去る。と間もなく横山町辺の提灯をつけた辻駕籠一梃、飛ぶがように駈来って門口に止るや否や、中から転出る商人風の男、「先生は御在宅でいらっしゃいますか。鶴屋喜右衛門の手代で御座います。」と声もきれぎれに言うのであった。手代は主人の寝所に通って何やら密談に耽った後門外に待たせた辻駕籠に乗って再び何処へか飛び去ってしまったが、それからというもの偐紫楼の家の内は俄に物気立って、咳嗽を交うる主人の声と共にその妻の彼方此方と立働くらしい物音が夜の深け渡るまでも止まなかった。

丁度その刻限、そんな騒ぎのあろうとは露知らぬが仏、門人の柳下亭種員は新吉原の馴染の許に泊っていたのである。