Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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あめしょうしょう

雨瀟瀟・雪解 他七篇

永井 荷風

Lisez 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 414 caractères · 289 écrans

Aozora Bunko

」と呼ぶものがある。この貸間に引移ってから、間もなく銭湯の中で向から話をしかけるまま心安くなった五十前後の未亡人らしい女である。湯の帰り、道づれになると、「お茶でも一つ上っていらッしゃい。」と言う。「何か急場の事で御金の御入用がありましたら、証文も何もなしで、御用立てをしますから。」と言ったこともある。お千代は良人にも話をした上金を借りたいとは思いながら言出しかねてそのままにしていたのである。此方から出掛けた事もなければ、向から尋ねて来たこともない。

この老婆は以前は大塚の坂下町辺、その前は根岸、または高輪あたりで、度々私娼媒介の廉で検挙せられたこの仲間の古狸である。お千代が現在の二階へ越して来た時分、この老婆もまたこのあたりへ引越して来たのである。多年の経験で、この老婆は女を一目見れば、誘惑することが出来るか否かをすぐに判断する眼力を持っている。殊に女湯の中で、着物を脱いだり着たりする様子を一見すれば、その女の過去現在の境遇は勿論のこと、男の気に入る性の女かどうかをも誤なく判断する事ができる。お千代はこの老婆の目にとまった。その年恰好から見ても、遊びあきて悪物食のすきになったお客には持って来いという玉だと睨んだのである。