Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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あめしょうしょう

雨瀟瀟・雪解 他七篇

永井 荷風

Lisez 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 414 caractères · 289 écrans

Aozora Bunko

」

兼太郎のあけた窓の明りで二階中は勿論の事、梯子段の下までぱっと明くなった処からこの家の女房は兼太郎の起きた事を知ったのである。

「どうだか家じゃあるまいよ。」と兼太郎はそんな事よりもまず自分の座敷の火鉢に火種が残っているか否かを調べた。

「田島さんもうじきお午ですよ。」

襖の外で言いながら、おかみは梯子段を上り切って突当りに一間ばかり廊下のようになった板の間から、すぐと裏屋根の物干へ出る硝子戸をばビリビリ音させながら無理に明けようとしている。いつも建付けの悪いのが今朝は殊更雪にしめって動かなくなったのであろう。

この硝子戸から物干台へ出る間の軒下には兼太郎の使料になっている炭と炭団を入れた箱にバケツが一個と洗面器が置いてある。

「あら、まア田島さん。炭も炭団もびしょぬれだよ。昨夜の中にどうにかしてお置きなされァいいのにさ。」

物干竿を掛直したかみさんは有合う雑布で赤ぎれのした足の裏を拭き拭き此度は遠慮なくがらりと襖を明けて顔を出した。眉毛の薄い目尻の下った平顔の年は三十二、三。肩のいかった身体付のがっしりした女であるが、長年新富町の何とやらいう待合の女中をしていたとかいうので襟付の紡績縞に双子の鯉口半纏を重ねた襟元に新しい沢瀉屋の手拭を掛け、藤色の手柄をかけた丸髷も綺麗に撫付けている様子。