Classiques japonais avec furigana
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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lisez 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 414 caractères · 289 écrans
まんざら路地裏の嚊とも見えない。以前奉公先なる待合の亭主の世話で新富座の長吉と贔屓の客には知られている出方の女房になって、この築地二丁目本願寺横手の路地に世帯を持ってからもう五年ほどになるがまだ子供はない。
「おかみさん。湯に行って暖たまって来よう。今日は一日楽休みだ。」と兼太郎は夜具を踏んで柱の釘に引掛けた手拭を取り、「大将はもう芝居かえ。一幕のぞいて来ようかな。」
「播磨屋さんの大蔵卿、大変にいいんですとさ。」
「おかみさんまだ見ないのか。」
「お正月は御年始廻りや何かで家の人がいそがしいもんだから。」と女房は襟にかけた手拭を姉さまかぶりにして兼太郎の夜具を上げ、
「ゆっくり行ってお出なさい。綺麗に掃除して置きますよ。田島さん、そうそう持って来るのを忘れてしまった。牛乳が火鉢の処に置いてありますよ。」
「今朝はもう牛乳はぬきだ。日が当っていてもやっぱり寒い。」と兼太郎は楊枝をくわへて寝衣のまま格子戸を明けて出た。
路地の雪はもう大抵両側の溝板の上に掻き寄せられていたが人力車のやっと一台通れるほどの狭さに、雪解の雫は両側に並んだ同じような二階家の軒からその下を通行する人の襟頸へ余沫を飛している。