Classiques japonais avec furigana
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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lisez 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 414 caractères · 289 écrans
大学の制服をつけた私の弟でした。この両三年は殊更に音信も絶えがちになっていたので、故郷の父親は大層心配して、汽船会社に聞合し、自分の乗込んだ船を知り、弟を迎いに差向けたという次第が分りました。
私は覚えず顔を隠したいほど恐縮しました。同時に私はもう親の慈愛には飽々したような心持もしました。親は何故不孝なその児を打捨ててしまわないのでしょう。児は何故に親に対する感謝の念に迫められるのでしょう。無理にも感謝せまいと思うと、何故それが我ながら苦しく空恐ろしく感じられるのでしょう。ああ、人間が血族の関係ほど重苦しく、不快極るものはない。親友にしろ恋人にしろ、妻にしろ、その関係は、如何に余儀なくとも、堅くとも、苦しくとも、それは自己が一度意識して結んだものです。しかるに親兄弟の関係ばかりは先天的にどんな事をしても断ち得ないものです。断ち得たにしても堪えがたい良心の苦痛が残ります。実に因果です。ファタリテーです。閣下よ。人の家の軒に巣を造る雀を御覧なさい。雀の子は巣を飛び立つと同時に、この悪運命の蔭からすっかり離れてしまいます。その親もまた道徳の縄で子雀の心を繋ごうとは思っていないらしい。