Classiques japonais avec furigana
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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lisez 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 414 caractères · 289 écrans
私は一目弟の顔を見ると、同じ血から生れて、自分と能く似ているその顔を見ると、何ともいえない残酷な感激に迫められました。いわれぬ懐しい感情と共にこの年月の放浪の悲しみと喜びと、凡ての活々した自由な感情は名残もなく消えてしまったような気がしました。身のまわりの空気は忽ち話に聞く中世紀の修道院の中もかくやとばかり、氷の如く冷かに鏡の如く透明に沈静したように思われました。
弟はいいます――兄さん、六時の汽車が急行です、切符を買いましょう。
私は何とも答えませんでした。私は神戸のステーションで、品格のないしかし肉付のいい若いアメリカの女が二、三人、花売りから花束を買っているのを見ただけです。私はその翌日の朝新橋に着き人力車で市ヶ谷監獄署の裏手なる父の邸宅へ送り込まれました。
その夜、家ではいささかの酒宴が催されました。父は今年六十。たとえ事情は何であっても、表向は家の嫡子という体面を重ずるためでしょう。私をば東坡書随大小真行皆有※媚可喜処老※書と書いた私には読めない掛物を掛けた床の間の前に坐らせ、向い合っては父と母。私の右には母の実家を相続して、教会の牧師になっている二番目の弟、左には、私を出迎に来た末の弟が制服の金ボタンいかめしく坐りました。